「日本語でちゃんと説明したのに、全然違うものが上がってきた」「何度確認しても同じミスが繰り返される」——オフショア開発でこの経験をお持ちの方は少なくありません。会話はできている、メールのやり取りもある。なのになぜ認識がズレるのか。多くの場合、その原因は「言語の壁」ではなく、もっと深いところにあります。
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「伝わった」と「理解した」は、まったく別物
コミュニケーションには3つの層があります。①言葉が聞こえた/読めた、②内容を理解した、③文脈・意図・優先順位まで把握した——この3つはまったく別の話です。
日本語が話せるベトナムのエンジニアであっても、②③の層で日本人とは異なる理解をしていることがあります。「ユーザーが使いやすいように」「いい感じにしてください」「柔軟に対応してほしい」——こういった表現には日本のビジネス文化における暗黙の基準が込められていますが、それはベトナム側には伝わりません。
もっと根本的なことをいえば、「何を作るか」よりも「なぜ作るか」「誰のために作るか」「どんな状況で使われるか」という文脈を共有できていないことが、認識ズレの最大の原因です。
「できます(わかりました)」が意味する3つのパターン
ベトナムのエンジニアに限らず、アジア圏ではネガティブな返答(「わかりません」「できません」)をすることに抵抗感がある文化があります。結果として「できます」「わかりました」という返答が返ってきても、実際には次の3パターンのどれかです。
パターン①:完全に理解して実装できる状態(理想)
要件を正確に把握し、実装方法も明確。このパターンの割合は、仕様の精度とコミュニケーションの質によって大きく変わります。
パターン②:なんとなく理解したが詳細が不明(最多)
大まかな方向は把握したが、具体的な振る舞いや例外ケースがわからない。聞き返すのが失礼だと思い、自分なりの解釈で進める。
パターン③:とりあえず承諾して後で考える(最悪)
圧力を感じて「できます」と言ったが、実際には手をつけていない。デッドラインが近づいてから問題が発覚する。
②と③の返答を「できます」として受け取ることが、後の認識ズレを生む根本原因です。確認方法を変えない限り、同じパターンが繰り返されます。
「確認した」はずなのになぜズレるのか——見落とされがちな3つのポイント
ポイント1:確認の仕方が「イエス・ノー」になっている
「わかりましたか?」という問いに対して「はい」と答えることは、理解の確認にはなりません。「では、実装した結果どうなりますか?具体的に教えてください」という形で、相手の理解を言語化させることが必要です。
ポイント2:例外ケースが定義されていない
「通常ケース」の仕様は伝えられていても、「エラー時はどうする」「データが0件のときは」「ユーザーが権限を持っていない場合は」といった例外ケースが定義されていないと、エンジニアは自己判断で実装します。この自己判断が認識ズレを生みます。
ポイント3:フィードバックをもらう文化がない
「何かわからないことがあったら言ってください」というスタンスは機能しません。「詰まっていることがあったら報告する」「認識が合っているか途中で確認する」という行動を、仕組みとして組み込む必要があります。
スマラボが解決する「翻訳の壁」——言語翻訳ではなく、文脈の翻訳
スマラボの日本人PMが担う最も重要な役割の一つが、「翻訳」です。ただし、これは日本語↔ベトナム語の翻訳ではありません。「お客様のビジネス課題・意図・優先順位」を「ベトナムのエンジニアが迷わず実装できる仕様」に変換する、文脈の翻訳です。
具体的には以下を行います。
・「なんとなくこういうものを作りたい」をユーザーストーリーに落とし込む
・「いい感じに」を「○○という条件のとき○○する、○○という条件のとき○○する」に具体化する
・例外ケース・エラーケース・ユーザー属性ごとの振る舞いをすべて文書化する
・「完成の定義」を受け入れテスト票として事前に作成する
これにより、「エンジニアが迷わない状態」を作り出します。認識ズレはコミュニケーション不足ではなく設計の問題——この認識がスマラボの体制設計の起点です。
認識ズレを防ぐための「スマラボ式3つのルール」
ルール1:仕様は「書かれていないことはやらない」前提で作る
エンジニアが自己判断を最小化できるよう、仕様書に書かれていないことは「未定義」として扱い、必ず確認するルールにします。
ルール2:「完成」を先に定義する
開発を始める前に、受け入れテスト票(完成判定基準)を作成します。「何をもって完成か」の合意が先にあれば、途中の確認もスムーズになります。
ルール3:週次デモで方向性を合わせる
完成品を一度に確認するのではなく、機能単位・週次で動くものを見せてもらい、方向性のズレを早期に発見します。
認識ズレが繰り返されているなら、それはコミュニケーションの「量」ではなく「設計」の問題です。体制の作り方から見直しませんか。
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