【2026年最新】ベトナムオフショア開発は生成AI時代にどう向き合うべきか?

発注先国、人材コスト、契約形態、現場の課題に関する最新データを読み解き、生成AI時代にベトナムオフショア開発で成果を出すための考え方を整理します。

2026年最新 ベトナムオフショア開発 生成AI時代にどう向き合うか?

執筆者

三浦 賢弥

ベトナム経済メディアInfoBank 編集長

三浦 賢弥

KENYA MIURA

筑波大学大学院でのベトナム研究・ホーチミン市師範大学での留学を経て、JETRO(日本貿易振興機構)に入構。ベトナム進出コンサルティング・市場調査会社に7年間携わり、2026年1月にベトナム経済メディアInfoBankを企画・運営する株式会社InfoBase創業。代表取締役に就任。

ベトナム経済メディア InfoBank https://infobank-vn.com/

株式会社アイディーエス

IDS Corporation

東京都港区に本社を置くシステムインテグレーター。2017年にベトナム・ホーチミン市へ100%子会社を設立し、日本企業向けオフショア開発サービス「スマラボ」を展開しています。

生成AIの普及により、システム開発の進め方は大きく変わり始めています。コード生成、翻訳、仕様整理、テスト作成などをAIが支援できるようになり、「海外へ開発を委託する意味も薄れるのではないか」と考える方もいるでしょう。

しかし、企業がオフショア開発に求めているものは、単純な実装作業やコスト削減だけではありません。開発リソースの確保、継続的なチームづくり、業務知識の蓄積、複数拠点での開発体制など、AIだけでは代替できない役割があります。

生成AI時代のオフショア開発では、「安く作る場所」を探すのではなく、AIを共通基盤として活用しながら、人と組織の力をどう組み合わせるかが重要になります。

本記事では、「2025年版オフショア開発白書」およびベトナムIT人材市場のデータをもとに、ベトナムオフショア開発の現在地と、これからの向き合い方を解説します。

企業がオフショア開発を検討する最大の理由は「リソース確保」

オフショア開発を検討した理由。開発リソースの確保31社、コスト削減26社など
出所:2025年版オフショア開発白書よりInfoBank作成

オフショア開発を検討した理由で最も多かったのは「開発リソースの確保」の31社、次いで「コスト削減」の26社でした。グローバル戦略、海外展開、開発スピード向上といった回答もありますが、人材の確保が最も切実な目的であることが分かります。

この結果から、オフショア開発を単なるコスト施策として評価するのは適切ではありません。国内採用だけでは必要なスキルや人数を確保しづらい状況で、開発能力を継続的に持つための選択肢として考える必要があります。

生成AIは一人あたりの生産性を高めますが、要件を整理する人、設計を判断する人、成果物をレビューする人、利用者と調整する人まで不要にするわけではありません。AIを活用できる人材を含めて、必要な体制をどう確保するかという課題は残ります。

発注先国ではベトナムが43%で最多

オフショア開発の発注先国別ランキング。ベトナム43%、中国21%、インド14%
出所:2025年版オフショア開発白書よりInfoBank作成

発注先国別では、ベトナムが43%で最多となり、中国21%、インド14%と続きます。ベトナムが選ばれる背景には、日本向け開発の経験を持つ企業が増えていること、IT人材の育成が続いていること、日本との時差が2時間で連携しやすいことなどがあります。

一方、「ベトナムだから安心」とは限りません。同じ国でも、企業によって得意分野、品質管理、教育体制、日本語対応、セキュリティ、プロジェクト運営の成熟度は異なります。国の比較だけでなく、委託先がどのような開発プロセスと組織文化を持つかまで確認することが重要です。

ベトナムIT人材の給与は経験・地域で差がある

ベトナムITエンジニア経験年数別の平均月収推移。2024年と2025年の比較
換算レート:1円=164.49VND。出所:IT Viec「ベトナムのオフショア開発人材の動向」よりInfoBank作成

経験年数別の平均月収を見ると、2025年は1年未満で8.9万円、1〜2年で12万円、3〜4年で19万円、5〜8年で25.5万円、8年以上で31.9万円となっています。経験を積んだ人材ほど給与が高く、シニア層やマネジメント人材を確保するには相応のコストが必要です。

ベトナム主要3都市のIT人材平均月額給与。ハノイ、ホーチミン、ダナンと全国平均の推移
換算レート:1円=164.49VND。出所:IT Viec「ベトナムのオフショア開発人材の動向」よりInfoBank作成

都市別ではホーチミンが比較的高く、2025〜2026年の平均月額給与は27.3万円です。全国平均は26.3万円、ハノイは24.6万円、ダナンは24.1万円となっています。

ここで注意したいのは、エンジニア本人の給与と、発注企業が支払う委託単価は同じではないことです。委託単価には、採用、教育、オフィス、開発環境、管理、通訳・ブリッジSE、福利厚生など、チームを維持するための費用が含まれます。給与データだけで価格の妥当性を判断せず、提供される役割と管理範囲を確認してください。

人材供給を支える大学教育と若いIT人材

ハノイ工科大学の入口
ハノイ工科大学(Hanoi University of Science and Technology)

ベトナムでは、ハノイ工科大学をはじめとする理工系大学がIT人材の供給を支えています。若い人材を採用し、実務を通じて育成できる点は、継続的な開発体制を構築するうえでの強みです。

ただし、若手人材が多いことと、すぐに高品質な成果物を出せることは別の話です。技術研修だけでなく、業務理解、報告・相談、レビュー、ドキュメント作成まで含めた育成の仕組みが必要です。委託先を選ぶ際は、採用人数だけでなく、教育内容、離職時の引き継ぎ、シニア層による支援体制も確認しましょう。

課題の上位はコミュニケーションと品質管理

オフショア開発企業に感じた課題。コミュニケーション力30社、品質管理27社など
出所:2025年版オフショア開発白書よりInfoBank作成

オフショア開発企業に感じた課題では、「コミュニケーション力」が30社、「品質管理」が27社と突出しています。納期管理、技術力、価格、開発スピードよりも、伝達と品質の安定が大きな課題として認識されています。

生成AIは、この領域で有効な支援手段になります。たとえば、会議内容の要約、仕様書の翻訳、チケットの構造化、コードレビューの補助、テストケースの作成などに活用できます。言語差や記録不足による認識齟齬を減らし、確認作業を効率化できるでしょう。

一方で、AIが出力した内容が正しいかを判断する責任は人に残ります。質問をため込まない、問題を早く共有する、相手の意図を確認する、品質基準を守るといった行動は、ツールを導入するだけでは定着しません。

AIで補いやすい領域

翻訳、議事録、仕様の整理、コード生成、レビュー補助、テスト作成、ナレッジ検索など、情報処理と定型作業。

人と組織で整える領域

要件の判断、優先順位、責任分界、問題報告、顧客理解、品質文化、信頼関係など、状況に応じた意思決定と行動。

契約形態はラボ型が45%で最多

オフショア開発の契約形態。請負32%、ラボ45%、SES20%、その他3%
出所:SHIFT ASIA「2025年版オフショア開発白書」よりInfoBank作成

契約形態では、ラボ型が45%で最も多く、請負32%、SES20%と続きます。ラボ型開発は、一定期間にわたり専属チームを確保し、優先順位や要件を調整しながら開発を進める形です。

仕様変更が多いプロダクト開発や、継続的な保守・改善では、知識をチーム内に蓄積しやすいラボ型と相性があります。生成AIの活用方法も、単発案件ごとに持ち込むより、継続チームの標準プロセスとして改善する方が定着しやすいでしょう。

ただし、ラボ型は人を確保すれば自動的に成果が出る契約ではありません。発注企業側にも、優先順位の決定、要件の説明、レビュー、受入の役割があります。任せる範囲と自社に残す判断を明確にする必要があります。

成功の決め手は、生成AIがあってもコミュニケーション

オフショア開発を成功させるうえで一番重要なこと。コミュニケーション20社が最多
出所:2025年版オフショア開発白書よりInfoBank作成

オフショア開発を成功させるうえで最も重要なこととして、「コミュニケーション」が20社で最多でした。ブリッジSEの能力、ドキュメントの書き方、両社の信頼関係、プロジェクトの進め方といった回答を大きく上回っています。

生成AIによって翻訳や情報整理が容易になっても、コミュニケーションの重要性は下がりません。むしろ、AIが作成した仕様やコードを前提に、誰が確認し、どの基準で承認し、問題があればどう修正するかという合意が必要になります。

これからのオフショア開発では、AIの導入有無だけでなく、AIを使った成果物をチームで検証し、共通の品質基準へ反映できる運営力が差になります。

生成AI時代の委託先選びで確認したい5つのポイント

  1. AI活用のルール:利用可能なツール、入力禁止情報、生成物のレビュー方法が決まっているか
  2. 品質保証:人によるレビュー、テスト、承認を含む完了条件が明確か
  3. コミュニケーション:質問・課題・仕様変更を早期に共有する習慣があるか
  4. 人材育成:若手を支えるシニア層、教育、ナレッジ共有の仕組みがあるか
  5. 体制の継続性:人員変更時の引き継ぎや、案件に応じた増員・役割変更が可能か

AIツールの名称や導入実績だけを確認するのではなく、実際のプロジェクトでどの工程に使い、誰が品質を担保するのかを質問しましょう。小規模な案件や一部工程から始め、コミュニケーション、品質、スピードの変化を測定してから拡大する方法も有効です。

まとめ:ベトナムオフショア開発は「AI×チーム」で考える

最新データからは、企業がオフショア開発に求める最大の目的が開発リソースの確保であり、ベトナムが主要な発注先として選ばれていることが分かります。同時に、コミュニケーションと品質管理が引き続き大きな課題です。

生成AIは、翻訳、仕様整理、実装、テストなどを効率化し、国をまたぐ開発の障壁を下げます。しかし、要件の判断、品質への責任、問題の早期共有、信頼関係まで自動化するものではありません。

ベトナムオフショア開発を検討する際は、単価や人数だけで比較せず、AIを安全かつ実務的に使えるプロセスと、継続的に改善できるチームがあるかを確認することが重要です。

本記事の編集・執筆について

本記事の編集・執筆を担当した株式会社InfoBaseは、ベトナム経済・ビジネス情報メディア「InfoBank」を運営しています。現地への深い理解と専門的な調査をもとに、日本とベトナムのビジネスを情報面から支援しています。

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